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このように各人が別の財に絶対優位を持つ場合、生産に特化し、交換をするほうがよいことは、直感的にも明らかである(ただし、現実の世界では、こうした場合においても、自給度を高めるべきだとの議論がある)。 ところが、他のケースは、これとは異なる。
この場合には、リンゴとミカンのいずれについても、A氏が絶対優位を持っている。 だから、一見したところ、どちらもA氏が作るのがよいように見える。

生産性が劣るB氏には、出る幕はないように思えるのだ。 前に示したように、そうではないのである。
A氏は、ミカンの生産でも絶対優位を持っているにもかかわらず、自分で生産せず、B氏から買ったほうがよい。 その理由は、自分で生産する場合にはミカン1個につきリンゴ1個を犠牲にする必要があるが、B氏との交換では、0.83個を犠牲にするだけですむからだ。
つまり、自分で生産するよりB氏から買うほうが有利なのである。 このようなことになるのは、すでに述べたように、リンゴとミカンの相対的な生産費用(生産可能線の傾きで表されている)において、A氏とB氏で差があるからだ。
差があるかぎり、必ずその中間の値が存在する。 その値は、両者が受け入れることができる交換比率である。
したがって、次のことがわかった。 すなわち、選択と集中が必要なのは、絶対優位がある場合に限らない。
比較優位があるかぎり必要なことだ。 比較優位は、ほとんどの場合に存在するのである。

さて、以上で述べたことは、一見したところ「無から有を作り出す」魔法のように見える。 魔法ではなく、右で示したように実際に可能なことだ。
この例で、「ミカン12個対リンゴ10個」という交換比率をA氏の立場から見れば、リンゴを手放すことに有利な率だ(自分の庭では、リンゴ10個を手放してもミカン10個しか手に入らないのだから)。 だから、リンゴを生産しておき、市場で手放してミカンを入手するほうが(生産においてリンゴを犠牲にするよりは)、よいのである。
A氏はリンゴの生産に「相対的な優位性」を持っているから、利用すべきなのだ。 B氏の立場から見れば、ミカンを手放すのに有利な比率だから、ミカンの生産に特化し、市場でリンゴを購入するのがよい。
以上の方法の対極にあるのが、「戦争」という方法だ。 このモデルで「戦争」を記述すれば、A氏がB氏宅に侵入し、何本かの樹を「わが家のものだ」と囲い込んでしまうことである。

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